Wednesday 17 October 2012

本人活動の第一歩

日本から、知的障害のある方の「本人活動」の第一人者
奈良崎真弓さんがウズベキスタンへやってきました!!
奈良崎さんは、生まれ育った横浜市内で「本人会 サンフラワー」を主宰している他
JICAの短期専門家や短期派遣の青年海外協力隊として
海外の「本人」のエンパワメントのための活動も実施した経験もあります。

今回は、全くの個人的な観光目的で来てくださったのですが
「せっかくウズベキスタンへ行くから、ウズベキスタンの本人に会いたい!」との希望があり
ウズベキスタンのスペシャルオリンピックス(SO)と協働で
奈良崎さんと、ウズベキスタンの「本人」と、その親とで交流する活動を計画しました。
会場は、タシケント市チロンゾール地区にある66番特別支援学校です。

プログラムは奈良崎さん自身が考えたものを中心に組み立てました。
まずは、SOのアスリートの皆さんの練習風景の見学。
その後、奈良崎さんの指導により、体操を行いました。

軽いウォームアップの後、ボール回しなどの競争

体育館から会議室に場所を変えて、本人との交流会です。
奈良崎さんからの5つの質問に、本人が通訳を介して答えていきます。

「今後やってみたいことはありますか?」
「毎日、どんな生活をしていますか?」

本人が答えられないと、ついつい親が後ろからしゃしゃり出て代りに答えてしまったり
ロシア語、ウズベク語、日本語が飛び交ってちょっと混乱する場面もありましたが
無事5つの質問を全員に答えてもらうことができました。

表側にはロシア語とウズベク語、裏側には日本語で質問を書いたカードを用意

次に、折り紙に挑戦!
はじめは簡単にできる「かぶと」を折り
次に、折り紙に自分の夢を書いて、「ひこうき」の形に折って飛ばしました。

「ひこうき」が自分たちの夢を運んでくれますように・・・

次に、SOのアスリートの親との交流会を行いました。
奈良崎さんからの質問に、「○×カード」で答えてもらいます。

お母さんがほとんどで、お父さんは一人だけでした

「学校で差別を受けたことがありますか」
「住んでいる街で手を貸してくれる人がいますか」
といった質問に対し、様々な回答が出ましたが
実際には、ほとんどの親が同じような悩みや問題を抱えていることが
次第に明らかになりました。

「悩みや問題を、皆で集まって一緒に話し合って、解決して行って欲しい」
という奈良崎さんの提案に、大きくうなずく親たち。
最後は「エイエイオー!」の掛け声で交流会を締めくくりました。

ウズベキスタンでは、知的障害を持つ人たちの親の会や本人活動は
まだまだ活発ではありませんが
今回の奈良崎さんとの出会いがきっかけとなり
少しずつでも、知的本人による活動が進められていくことが期待されます。
今回の活動が、その初めの一歩になったのではないでしょうか。

希望の車いす第4弾!

9月末に運搬ボランティアの方が日本からウズベキスタンへ運んでくださった「希望の車いす」を
タシケント市ヤッカサライ地区に住む50歳の男性に寄贈することができました。

奥さんとともに

長年患っている糖尿病が原因で、足指を2本切断したばかりでなく
心臓病も患い、これまで何度も重篤状態に陥りました。
つい先日もタシケントの救急救命病院に緊急入院し、退院したばかりのところでした。

「日本の車いすは軽くて動きやすい!」と大変喜んでいただきました。
奥さんも「これで病院への通院の介助が楽になります」と目に涙を浮かべていました。

この車いすに関わってくださった希望の車いすの皆さんやボランティアの方々に
心から感謝申し上げたいと思います。

Wednesday 10 October 2012

今度は自分たちで!

障害当事者自助グループ「イスティクボル」が
初めて「障害平等研修(DET)」の1日コースを実施しました。

これまでは最短15分、最長2時間くらいの「ミニセッション」ばかりでしたが
今回は6時間をも費やしての本格DET!
どこまで「障害の社会モデル」を伝えられるのか
これまでの研修の成果の見せ所です。

DETを受けたことのない「イスティクボル」のメンバーも含め13名が参加
研修は、グループワーク、ロールプレイ、ビデオ分析などの手法を取り入れ
参加者が自ら答えを導けるよう、ファシリテーションしながら進められました。

グループワークで「差別的な表現」について議論
「態度のバリア」に関するロールプレイ
グループで話し合った内容を発表

いつもは「お客様」として研修に参加しているメンバーですが
いざ研修をする側になってみると
  必要な用具を過不足なく揃えること 
  時間配分や研修の組み立て
  パソコンやプロジェクター、スピーカーなど機器のセッティング
  参加者に時間やルールを守らせることの難しさや
  DETのツールの効果的な使い方
  お茶や昼ごはんなどの用意
  視覚障害のある参加者への配慮
など、事前に考えて準備しなければならないことが山のようにあることを実感したようです。
また、自分ではわかっていたつもりでも
いざ人にわかるように伝えようとすると簡単にはいかないことも
身を持って体験しました。

参加者は満足して帰って行きましたが
「イスティクボル」のメンバー間で行われた反省会では、様々な改善点が挙げられました。
次回はもっと上手くできるようになりたい!という向上心も芽生え
来月行われる予定の「障害平等研修・指導者養成研修(DET-ToT)」への期待がますます高まりました。

希望の車いす第3弾!


9月はウズベキスタン観光のベストシーズン。
在留邦人の家族や知人友人が最も多くウズベキスタンを訪れる時期でもあります。
自分の荷物を減らしてでも、車いす運搬ボランティアを引き受けてくださる方も多く
この9月だけで4台もの車いすが日本からウズベキスタンへと運搬されました。
ボランティアの皆さん、本当にありがとうございます!

大人用の1台は、タシケント市セルゲリ地区に住む、52歳の女性に寄贈されました。
2年前に脊柱ヘルニアを患って以降歩けなくなり
夫が家に居ないときは、軒先に出されたベッドで1日中寝たきりの生活を強いられていたそうです。
「車いすがあれば、近所を散歩することもできます」と
目を潤ませながら話してくれました。



また、子ども用の2台は、タシケント州ザンギアタ地区の9歳と7歳の姉と弟に届けられました。
車いすがないため、自宅で訪問教育を受けていた姉は
「これからは車いすで学校に行って、みんなと一緒に勉強したい」との希望を語ってくれました。



訪問教育ながらも優秀な成績を収めて表彰されたこともある彼女。
ロシア語が一番好きな科目だそうです。
1日も早く学校へ行って
たくさん新しい友達を作って、たくさん色々なことを経験して欲しいと思います。




女性障害者による女性障害者のための研修


9月20日、21日の2日間に渡り
カザフスタンの障害当事者団体「Shrakシュラック」が
ウズベキスタンの障害当事者団体「Millenniumミレニアム」と共催で
「女性障害者のリプロダクティブヘルス研修」を実施。
15名の女性障害者が参加しました。

ウズベキスタンに限ったことではありませんが
差別的な障害者観、伝統的なジェンダー観、イスラム文化の影響もあり
女性障害者が自らの性についてオープン語る機会はほとんどありません。

今回の研修では、ファシリテーターも女性障害者、参加者も99%が女性障害者で構成され
リプロダクティブヘルスに留まらず
女性障害者が経験する特有の差別や
それに対抗するための自助グループ作りなどのテーマも取り扱われました。
性を語ることにとまどいながらも、活発に議論している参加者らの様子が印象的でした。



絵本で障害児に笑顔を


名古屋を拠点に
ラオスの子どもに絵本を届ける活動を15年近く続けているグループのメンバー10名が
この9月ウズベキスタンを訪問。
RCSACという障害児リハビリテーション施設で
障害をもつ子どもとの交流活動を実施しました。

同グループの出し物の十八番は
「おおきなかぶ」という絵本の読み聞かせパフォーマンス。
この「おおきなかぶ」、実はロシア民話が基になっていて
ウズベキスタンでも「レプカ(ロシア語でかぶの意)」という名で広く親しまれています。

かぶを引っ張るおじいさんとおばあさんを後ろから助ける犬や猫やネズミの役は
参加した子どもにお願いして
ロシア語では「イーラス!イーラス!」
ウズベク語では「ブル・イッキ!ブル・イッキ!」
みんなで揃って掛け声をかけたら
最後にはおおきなかぶを引っこ抜くことができました。

みんなでおおきなかぶをひっぱれー!

グループとしては、障害児との活動は今回が初めてだったそうですが
「おおきく、おおきく、おおきくなぁれ」という、わかりやすい紙芝居や
「ことんこん」という、動きを見ても聞いても楽しい折り紙
手品や手遊びなど
言葉がなくても伝えられる活動を選んでくださったおかげで
子どもたちもその保護者の方も、とても喜んでいる様子でした。

「ことんこん」は作るのも簡単

中でも一番好評だったのは、子ども用ゆかたの着付け体験。
ポラロイドカメラで撮影した写真を
参加者は皆大切そうに持ち帰って行きました。

ピンクの振袖がお気に入り

通訳ボランティアとして参加してくれた皆さんにも、この場を借りて感謝したいと思います。
いつもいつも、本当にありがとうございます!!


自立生活体験合宿!


4月に日本の障害当事者講師から「自立生活」と「ピアカウンセリング」の研修を受けた
ウズベキスタンの障害当事者と一緒に
自立生活を実践してみるための合宿を企画しました。
日本からは、沖縄自立生活センター・イルカの3名が合流。
貴重な夏休みを費やし
渡航費用はイルカの職員や他団体から寄付を集めて工面してくださっての参加です。

イルカの皆さん、本当にありがとうございました!(Photo by Kazuki)

ウズベキスタンでは、障害当事者に限らず、大家族で暮らすことが多いため
障害当事者は特に、知らず知らずのうちに家族の誰かに面倒をみてもらいながら暮らしています。
もちろん、家の造りがバリアフリーでないため
車いすやウォーカーなどで自由に動き回れないことも原因の一つですが
  料理をしたことがない
  自分の服を洗濯をしたことがない
  市場で買い物をしたことがない
  自分の服を自分で選んで買ったことがない
といったことが日常的なのです。

何も言わなくても手助けしてくれる家族から離れて
赤の他人である介助者ボランティアの助けを借りながら
  自分で選んで
  自分で決めて
  結果には自分が責任を取る
という自立生活の概念を実践してみること。
これを合宿の目的にしました。

合宿中は3食自炊。
準備は、3泊4日分のメニュー決めから始まりました。
食材は、担当者が事前に買い出しに行き
食費も全額、自己負担です。

合宿中の研修プログラムも全て自分たちで考えました。

料理にチャレンジ!(Photo by Kazuki)

ところが、実際に始めてみると、本当に難しい!
料理担当の障害当事者は
「あれ取ってきて」「これやっといて」と、介助者をあごでこき使ってしまいます。
介助者も、「これは障害者にはできないから」と勝手に判断して、自ら動いてしまいます。
始めは「人の役に立てることが嬉しい」という善意で動いていた介助者ボランティアも
「どうして、やればできることさえやらないの?」という気持ちがどんどん膨らみ
2日目には堪忍袋の緒が切れて、料理介助をボイコット!!
すると、今度は障害当事者が「私たちだって精一杯頑張っているのに!」と
介助者ボランティアを非難しはじめ
一触即発の状態に・・・。

頑張るボランティア (Photo by Kazuki)

結局、見るに見かねた日本の障害当事者の方が
「介助者は障害者の奴隷じゃない!」と一喝。

翌日には全員参加のワークショップを開いて
お互いが感じたことを素直に話し合う場を設けました。
それがきっかけとなって、他人であるお互いを思いやる気持ちが芽生え
少しずつ軋んだ関係が和んで
お互い気持ちよく介助の依頼と提供ができるようになってきました。

思いのたけを語るボランティア (Photo by Kazuki)

そこでタイムアップ!
あっという間の4日間が終わりました。

(Photo by Kazuki)

ウズベキスタンの「のんびり」ペースが抜けきらず
遥々日本から来てくださったイルカの方々を
リソースとして活かしきれなかったという課題もありました。
(詳しくは介助者ボランティアとして参加したJOCVがブログに書いてくれています。)
それも含めて、全て彼らの選択・決定の結果としての「責任」なのです。

それぞれの家に戻って行った参加者達は
家族とこれまでとは少し違った関わり方ができるようになっていくのでしょうか。。。
これからも、傍で見守っていきたいと思っています。

編み物先生

ずいぶん前から聞いてはいたのですが
障害当事者自助グループ「イスティクボル」のメンバーに
編み物がとても上手な人がいて
近所の人たちにも編み物を教えているというので
最高気温40度超えの猛暑が一気に和らいだ9月初旬の日曜日
「メフモン(お呼ばれしたお客様)」としてタシケント郊外にある彼女の家を訪問しました。

もともと障害当事者団体の主催する教室で編み物を習ったのがきっかけだったようですが
手先の器用な彼女はあっという間に技術を習得。
近所の中学生が評判を聞きつけて
教えてもらうため彼女の家へ通ってくるようになり
その後、中学校でも編み物教室を開くなど
「編み物先生」として地元ですっかり有名になりました。
今も近所の中高生が入れ代わり立ち代わり彼女の家を訪れ
新しいデザインの作品に取り組んでいます。

この日も遊びに来ていた生徒たちが代わる代わる力作を見せてくれました。

作品を着たモデルの女の子
「最近作ったの!」と誇らしげな生徒




















最近少し体調がすぐれず
「イスティクボル」の集まりにも顔を見せに来ることがなかった彼女ですが
仲間の顔を見て、いくらか元気を取り戻した様子でした。

「イスティクボル」のメンバーは
彼女が参加できなかった「自立生活」や「ピアカウンセリング」の研修について紹介するなど
また彼女がグループに戻って来られるように促していました。

少しだけピアカウンセリングも実施

体調管理も含めて、母親が朝から晩まで彼女の面倒を見ているのが現状ですが
彼女のような重度の障害当事者が
介助者を使って自分のしたいことが自由にできる生活が送れるよう
プロジェクトは今後も当事者のエンパワメントと制度の基盤作りを支援していきます。

編み物先生と生徒たち